"3歳までの食体験が一生の味覚をつくる"と言われることをご存知でしょうか?意外かもしれませんが赤ちゃんの味覚はとても敏感で、産まれた時からすでに味覚形成が始まっているのです。そこで、フードアナリストで、食育のスペシャリストであるとけいじ千絵さんに、子どもの味覚発達のしくみや食体験についてお聞きしました。おかしやジュースの取り入れ方についても必読です!
とけいじ千絵さん
とけいじ千絵さん
1級フードアナリスト協会認定講師であり、「審食美眼を磨き、彩ある食生活を」をモットーに、『審食美眼塾』を主宰する食育スペシャリスト。
「三つ子の魂百まで」といいますが、味覚も3歳までの食経験で作られると言われています。ですから、3歳までにいろんな食経験を積ませてあげることが大切です。
産まれてすぐの赤ちゃんは、自分で食べ物を得ることができないので、口に入れられたものが自分の生存にとって必要なものかどうかを本能的に判断しています。舌の表面には味をキャッチするための味蕾(みらい)というブツブツした部分がありますが、この数が一番多くて敏感なのが実は産まれた時なんです。ですから、微妙な変化にとても敏感です。その後、生後5,6ヵ月で味覚が落ち着いてきます。この頃がちょうど離乳食を開始する時期。そして3歳になるまでに脳で味を判別できるようになっていきます。
離乳期・幼児期は、野生動物並みにシンプルな嗜好です。甘いものや脂肪の味が大好きで、血中濃度と同じくらいの塩分を好み、苦味と酸味を警告の味として感じます。そんな苦味や酸味を少しずつ“お、この味もアリだな”と思わせて経験値を増やしていくのが、味覚を豊かにしていくということです。
味覚の幅を広げる方法には、大きく分けて、以下の2つがあると考えています。
幼い頃から脳の中の引き出しにいろんな味を入れてあげると、味の感じ方が変わり、敏感に反応できるようになります。マヨネーズやケチャップで和えるとすべて同じ味になってしまいますよね。私はこれらのことを「マスキング調味料」と呼んでいますが、味の濃いものは破壊力があるんです。でも、素材はそれとは違って複合的な味です。例えばトマトは甘くもあり酸っぱくもあり、ちょっとしょっぱさを感じることもある。さまざまな素材の味にチャレンジするということを、生後半年から1歳半の間(離乳期)に経験させてあげてほしいですね。
そう言うと、“レシピのレパートリーを増やさなきゃ”と負担に思うお母さんもいるんですが、そんなことはありません。例えば、肉じゃがのじゃがいもをかぼちゃに変えるとか、玉ねぎの代わりにネギを使うとか。同じ味付けでも、素材が変わるだけで甘みが加わったり食感に違いが出ます。吐き出してもいいから、いろんな味をインプットさせてあげましょう。レシピに凝る必要はありません。
薄味が大切なのは、素材の味を経験させてあげるためです。味覚を育てるためには、とにかく感覚に敏感になることが大事だと思います。先ほど挙げたマスキング調味料のような味の濃いものは、口に入ってきた瞬間に味を感じられますが、薄味だと咀嚼して徐々に甘みや苦味を感じていきますよね。これが大切なんです。
もし自分の家の味が濃い味だなと感じたら、汁物から調整していきましょう。また、外食の翌日は薄味を意識して作るなど、上手にさじ加減していけば大丈夫です。
おやつは人を幸せにするものです。だから、その喜びを子どもにも経験させてあげたいと個人的には思っています。また、食事は与えられるものですが、おやつには自主選択の喜びがついています。
離乳期のおやつは捕食という意味合いが大きいので、なるべく食事に類似したものをあげたほうがいいのですが、いつも栄養面ばかり重視していては楽しくありません。そんな時にジュースを選ばせてあげるのもいい方法です。
また、いろんな味覚を育てるチャンスと考えるのもいいと思います。例えば、アイスのひんやり感や、ゼリーのツルンとした食感は、普段の食事ではなかなか味わえません。おやつは素材本来の味が活かされたものを選び、香料や過度な着色料は味覚を錯覚させてしまうものなので、なるべく避けましょう。素材が気になる方は、ジュースを凍らせてフローズンアイスにするのもおすすめですよ。